CRM(顧客管理システム)とは何か?

CRM (顧客管理システム) とは何か?

▼当記事の目次

  1. 表計算アプリによる顧客管理は失敗のもと
  2. CRM: 顧客管理システム とは何か
    • 2-1. CRM導入のねらいは「顧客情報の一元管理」
    • 2-2. 顧客情報は企業が次にとるべき戦略を示してくれる
  3. CRM小史:クラウドCRMの発展
    • 3-1. オンプレミス型のCRM
    • 3-2. クラウドCRMの登場
    • 3-3. CRMは今、中小企業でも導入しやすくなっている
  4. CRMサービスのバリエーション
    • 4-1. SFA: 営業支援システム
    • 4-2. MA : 営業自動化システム
    • 4-3. 図解:CRM / SFA / MA の相互の位置づけ
  5. 多様なCRMサービスから何を選べばよいか
  6. 柔軟なカスタマイズをCRMに求めるならFileMakerによるCRM

1. 表計算アプリによる顧客管理は失敗のもと

表計算アプリによる情報管理

Microsoft Excel や Google Spreadsheets に代表される表計算アプリは、デスクワークをする私達にとってすでに馴染みのある、とても便利なツールです。今や多くの標準的なPCではじめから利用可能なこともあって、業務管理用の帳面や書類フォーム、簡単なデータ分析に使われています。

ところが、表計算アプリも万能ではありません。特に企業活動にとって欠かせない「顧客情報の管理業務」については、多くの企業が表計算アプリで実装しようと試み、そのたびに数々の失敗に見舞われてきました。表計算アプリは、顧客の基本情報を住所録のように表としてまとめることまではできても、それ以上の複雑な処理については実現しづらいのです。[1]表計算アプリで特定のシステムを維持することが難しい理由は、ほかにも次のような点が挙げられます:(1) … Continue reading

にもかかわらず、それ以外のより良い手段を見つけられていないために、多くの企業や法人では、非効率な表計算アプリで顧客管理を行うことから脱却しきれず、そして日々さまざまなトラブルに悩まされ続けているのです。

そうした事態を避けてより良い顧客管理を実現するには、近年特に飛躍的な発展を遂げている顧客管理関連サービスである「CRM〔シーアールエム〕」 の導入がおすすめです。本記事では、企業・組織がCRMを導入するメリットについてまずお伝えした上で(▶本記事第2節)、CRMサービスが出現した歴史的経緯や(▶本記事第3節)CRMサービスの具体的な分類(▶本記事第4節)、クラウドCRMを選定する際の注意点と代表的なクラウドCRMサービスの紹介(▶本記事第5節)、そして当社が手掛けるFileMaker製CRMについても(▶本記事第6節)紹介します。

2. CRM: 顧客管理システム とは何か

crmの画像

CRM は、Customer Relationship Management (カスタマー・リレーションシップ・マネジメント / 顧客管理システム)と呼ばれるITツールの略称です。[2]Customer Relationship Management … Continue readingCRMは、「顧客情報」をデータベースとして保管・蓄積することを基盤として、組織のあらゆる業務を効率化することを目的として提供されてきました。そして現在でも、CRM というジャンル名で多くの製品が販売されています。

CRM と呼ばれる製品には、おおむね共通して以下のような機能が備わっています。

▼CRMの基本機能:

 ○ 法人顧客・個人顧客の基礎情報データベース
     (氏名・住所・電話・メールアドレス・Webサイト・SNSなど)
 ○ 顧客との契約履歴・取引履歴
 ○ 顧客情報を検索する機能
 ○ 担当者や関連する取引先の情報
 ○ 顧客の行動履歴に基づくランク表示
 ○ 現在までの取引状況の分析
 ○ 各種コミュニケーション履歴(メール/電話/チャット/対面の商談/etc.)
 ○ 必要書類の添付・格納
 ○ 業務に必要なその他の項目の設定

上記に挙げた CRM の各機能は、どれも「あったら便利そうなもの」であり、また表計算アプリ以上の働きをしてくれそうなものです。ですが、そうした個々の機能よりも重要な“ねらい”が CRM にはあると考えたほうが、CRMの核心を捉えやすいでしょう。その“ねらい”とは、

「顧客情報を個々人が抱え込まずに組織全体で一元管理すれば、そこから多様な業務を合理化・効率化できる」

ということです。

2-1. CRM導入のねらいは「顧客情報の一元管理」

顧客情報の一元化

顧客情報を一元管理すると、なぜ効率が上がるのでしょう? それには明確な理由があります。

成功している企業ほど、多くの顧客と良好な関係を築いているものです。ですが常に一人の顧客に固定のスタッフが対応できるとは限りません。その顧客に最初に対応したスタッフが、別のスタッフにその顧客の対応を引き継いでもらうことは、業務ではよくある状況です。

そうした引き継ぎ作業で必要な顧客情報が部署ごと、個人ごとのローカルフォルダに散らばってしまっていたら、引き継ぎは決してうまくいきません。スタッフごと・部署ごとの垣根を超えて、あらゆる顧客の情報――基本情報だけでなく、これまでどのようなサービスを提供してきたかという“来歴を含めたデータ――が参照できてはじめて、この引き継ぎリスクを最小にすることができます。

部門を問わず社員の誰でも、顧客対応のために常にアクセスできる顧客データベースがある状態。そんな状態であれば、「顧客情報が一元管理されている」と言えます。CRMを適切に導入すれば、そのような状況が半ば自動的に実現できるわけです。

 (a) 顧客対応における社内引き継ぎの失敗が、多く報告されていないか?
 (b) 顧客情報の管理について、非効率なプロセスが含まれると組織内で指摘されてこなかったか?

この2点のうち1つ以上でも心当たりがあるなら、今こそ CRM 導入を検討する時かもしれません。CRMを導入することで、「あらゆる顧客について、組織の全員が全員“知っている”状態」を作り出せれば、それは組織にとって大きな強みとなります。

2-2. 顧客情報は企業が次にとるべき戦略を示してくれる

企業戦略と顧客管理

CRM には、現在の顧客関連業務の非効率を改善するための仕組みが組み込まれています。ですが、CRMのもつ潜在能力はそれだけににとどまりません。CRMにひとたび格納された顧客情報は、ただそこにしまわれてじっとしているだけでなく、集約された顧客情報を軸としてさまざまな業務を自動化・効率化させられるはたらきも兼ね備えています。

ところで、顧客情報からさらにどんな業務情報が引き出せると便利だと言えるでしょうか。事例として、BtoCのネット通販の企業のケースを考えてみましょう。たとえば以下のような情報があれば、顧客に対して企業がどのようにアプローチを仕掛けるべきか、より明確になるはずです。

 ○ どんなタイミングや頻度で特定の商品を購入しているのか?
 ○ 何をほしいものリストに入れたまま買い控えているのか?
 ○
販促メールやSNSへの反応はどの程度確認できるか?
 ○ 会員専用の会員ランクポイントをどれだけ貯めているか?
 ○ 問い合わせ・苦情などの履歴にはどのようなことが記録されているか?

そしてもし、それらの情報がいつでも閲覧できる仕組みが整っていたら、どうなるでしょう? 経営者や現場のスタッフはきっと、次に必要とされている業務課題を今よりもっと発見しやすくなるに違いありません。そして実は、CRMには顧客名簿の管理だけでなく、こうした分析的な情報も併せて出力処理してくれる働きが備わっているのです。

CRMの活躍する範囲はBtoCだけではありません。BtoB の製造業のケースでも、顧客情報の分析は重要な位置を占めます。たとえばここ数年の受注データの履歴が個々の取引先ごとに確認できれば、今後その顧客とどのくらいの規模の取引が見込めるかの概算値を出力できます。また発注書や納品書などの定型書類を、取引先ごとに異なる宛名・住所・さらには挿入されるデータの雛形ごと切り替えて送れれば、本来は手動でそのつど書き換えなければならなかった手間が軽減され、事務処理の能率が大きく改善されるでしょう。

このように、(BtoCかBtoBかというだけでも)業態によって CRM に期待される機能は多少異なってきます。ですがいずれにせよ、表計算アプリよりもさらに積極的に顧客情報を活用できる手段が、CRMに多く用意されているという点では共通しています。

3. CRM小史:クラウドCRMの発展

顧客管理を一元化することで、組織にさまざまな恩恵をもたらすこと。それがCRMというツールの眼目であることを紹介してきました。そんなCRMですが、問題解決のツールとして安価かつ簡単に導入できるようになったのは、実はごく最近のことです。企業組織の業務ツールとしてのCRMの歴史は、20世紀の中盤から終わり頃にかけて徐々に発展してきました。[3] … Continue reading

3-1. オンプレミス型のCRM

server_rack

顧客管理のためのソフトウェア・サービスを明確に「CRM」と呼んだ最初の製品は、1993年にSiebel Systems の技術者である Tom Siebel らが開発した Siebel CRM であるとされています。[4]ただし Tom Siebel らの商品が CRM … Continue readingその後、さまざまなCRMサービスがITベンダーから提供されましたが、2010年代の始めまでは、その多くが大企業向けにとどまっていました。[5]海外製品では、Goldmine 社や Maximizer … Continue reading

どうして便利なはずのCRMの導入が、企業全体であまり進んでこなかったのでしょうか。CRM が機能するためにはまず、社内サーバやLAN環境など、社内のPC同士で通信データをやりとりするための環境を構築する必要がありました(この設置方式を「オンプレミス」と呼びます)。そして、その工事費用込みでのインフラ投資を行うには、CRM は業務ツールとしてまだ敷居が高く、一部の大企業や、ネットワーク関連の技術に長けた一部中小企業でのみ注目されるにとどまりました。また、高速インターネット通信が2000年代ではまだ十分に普及しきれておらず、社会全体のネットワークインフラの基盤が脆弱だったことも、導入の遅れの原因として考えられます。

3-2. クラウドCRMの登場

クラウドCRM

ですが2010年前後を境に、CRMの導入について風向きが変わってきました。高速インターネットの普及が進んだことで、自社の外にあるサービスにオンラインで利用する「クラウド型のCRM」(クラウドCRM)が、徐々に登場してきたためです。

クラウドCRMの最大の利点は、導入を検討する企業が、自社でサーバ等インフラ投資をしないままの状態で、CRMの機能をフルに活用できるということです。2000年代前半までと異なり、光回線を含む高速インターネットが各企業でもあたりまえの前提となってきており、クラウド系のサービスを社内から利用する敷居も大きく下がってきていたことが、クラウドCRMの伸長の背景にはあります。さらに近年では、導入費用や月額費用ゼロで無料トライアル版を導入できるCRMサービスも多数登場してきています。

3-3. CRMは今、中小企業でも導入しやすくなっている

会議中の企業メンバー

CRM導入のボトルネックだった「社内ネットワークインフラも同時に整備する必要がある」という前提が、高速インターネットやWifi技術の普及により、自明のものではなくなってきました。そのおかげで、企業の規模に関係なく、自社の業務にとって価値があるかどうかだけに着目して、CRMの導入を検討できる状況が整いつつあります。

そしてCRM自体の効用ということに関して言えば、CRMを企業が導入することは、きわめて費用対効果の高い投資になるというデータも報告されています。[6] … Continue reading 現状の顧客管理業務のありかたに限界を感じているなら、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょう。

4. CRMサービスのバリエーション

バラエティに富んだもの

現代のCRMはクラウド型のCRMが主流になっていることを述べました。ですが、CRMと呼ぶ内容は、従来の顧客関係管理だけにとどまらなくなっています。CRMと同一視されることも多い営業支援システム(SFA)やマーケティング自動化(MA)など、さまざまな技術やサービスが「CRM」という名の下に続々と集ってきているという現状があります。そのため、社内システムとしてCRMを導入する際にも、「何を、どこまで実現したいのか」をあらかじめ積極的に把握しておく必要があるでしょう。

下記では、CRMとよく似たサービスとして言及されることの多いSFA(営業支援システム)とMA(マーケティング自動化)の内容を紹介し、これまで解説してきたCRMの機能や役割とどのような違いがあるかを解説します。

4-1. SFA: 営業支援システム

SFAは、Sales Force Automation(営業活動自動化 / 営業支援ツール)の略称です。その名の通り、営業活動に必要な各種の情報をデータベースとして保管・蓄積することを軸としたITツールで、営業部を持つ企業で特に活用されています。

SFAも、CRMと同様に顧客データベースを取り扱います。その上で、CRMよりもさらに「(契約に至るまでの)案件の管理」を重視した機能を提供する傾向があります。

SFAのカテゴリに含まれるITツールには、おおむね以下のような機能が揃っています。

▼SFAの機能

 ○ 営業日報
 ○ 目標設定
 ○ 達成状況の確認
 ○ 会議資料の自動作成
 ○ 成約内容の管理
 ○ 見積書 / 請求書 / 発注書 / 納品書 作成
 ○ 商品情報・在庫情報の参照

このように、SFAは主に企業から顧客に対する営業活動を促進するために重要な機能を重視する傾向にあります。一方で、いったん契約が締結したなら、その商談相手は「見込み顧客」ではなく、営業活動がいったん完了した「継続的な顧客」に変わります。そうなれば、CRMにあるような「顧客との継続的な関係強化」を担う機能も用意されていたほうが、社内システムとして当然便利です。

そうした流れから、「SFA とカテゴライズされてはいるけれど、実際には CRM 風の機能も搭載している(あるいはその逆に、CRM として売っているが実は SFA の機能も含んでいる)事例」が CRM と SFA の両方から登場してきました。また、近年では SFA も CRM もまとめて「CRM / SFA」という呼び方でくくられる傾向が増えています。[7]CRMとSFAの区別に関しては、下記も参考になります:安齋慎平 / データのじかん. … Continue reading

4-2. MA : 営業自動化システム

マーケティング自動化

MAとは、Marketing Automation(営業自動化システム)の略です。これも SFA と同様に営業活動に特化したITツールです。ただし、SFAが契約締結までに至る道のりに着目した機能が多いのに対して、MAは、まだ契約に至っていない「見込み顧客(リード)」にさらに関心をもってもらうための戦略に関わるツールが多く揃っているのが特徴です。[8] … Continue reading

たとえば、自社で展開するサービスに関して、Webサイトから資料取り寄せ請求が来た段階では、そのお客様はまだ契約の商談に至っていない「見込み顧客」と呼ばれます。この時、営業担当は、資料請求をしてきた顧客に対してさらに購買意欲を喚起するためのメールを送るなどして、さらに見込み顧客の興味を引く仕事をする必要があります。このような見込み顧客対応の局面を可能な限りシステムで自動化するのが、MA の役割です。

そしてこの活動は、商談の開始から契約成立までを主に管理する SFA と役割分担できる点が多くあります。また、すでに顧客になった個人・組織を特定のセグメントとして分類した上で継続顧客として働きかけるという点では、CRM に必要な機能とも重複する点があります。

4-3. 図解:CRM / SFA / MA の相互の位置づけ

これまで、CRM / SFA / MA のそれぞれの特徴を紹介してきました。どれも「顧客管理」を基盤として業務の効率化を図るという点では共通しています。その上でこれらは、顧客の“どの段階” に働きかけるかという点において違いがあるようです。

これら三種類の顧客管理用ITツールを、顧客との関係において図式化すると、以下のようになるでしょう。

【現代のCRMサービス群】

リード顧客の獲得&育成

MA

見込み客を対象に、幅広い営業
活動を実施する段階で特に用いられるツール。各種のマーケティング活動を自動化して、より効率的な営業活動を目指す。

商談・契約成立

SFA

営業部門において、商談中の顧客の情報や
関連する業務プロセスを自動化することで、
より洗練された営業活動を実現し、営業の実績を向上させる。

関係の構築&維持

CRM

顧客情報を組織全体で共有し、顧客と良好な関係を築くための活動を実施する段階で特に用いられる。顧客のセグメントに応じた細やかな働きかけが得意。

広義のCRM

(CRM / SFA)

MA / SFA / CRM など各サービスが担ってきた領域を複合させ多機能化した現在の各種システムを「CRM」と呼ぶことが近年増えつつある。営業支援の機能を特に強調する場合は「CRM / SFA」と併記することもあるが、MA / SFA / CRM のどの領域に力点を置くかについては、サービスごとに若干の違いがある。

個々の CRM / SFA / MA サービスを展開する事業者はそれぞれの呼び名でツールを販売していますが、近年はこうしたものをひっくるめて「(広義の)CRM」ないし「CRM / SFA」と呼ばれることが増えています。

ですが呼び名に多少のブレがあっても、経営者の視点から CRM について考えるべきことがそれによって特に大きく変わるわけではありません。「社内の顧客情報を一元化して、それらの情報を重要な社内業務の効率化に活かす」という原則から外れなければ、顧客管理システムを効率よく使いこなせるはずです。

5. 多様なCRMサービスから何を選べばよいか

どのサービスを選ぶか迷う

ここまで本記事では、まず昨今のCRMサービスの効用(特に、顧客情報の管理においては表計算アプリに対する優位性があること)を示した上で、CRMが最近は営業支援や見込み顧客への働きかけなどを含めてさらに多機能化しつつある現状を紹介してきました。

ところで、企業が実際にCRMの導入を図る際には、機能や内容が概ね固定化された SaaS [9]Software as a Service … Continue reading など、課金型のITサービスから選び、購入契約を結ぶことになります。この選定が、CRM導入を決めかねている企業担当者にとって大きな重荷となることは、想像に難くありません。なぜならITベンダーが提供する“CRM・のようなもの”は、現在日本企業向けに展開されているものだけでも何十種類もあるからです。

ITツールの比較レビューを公開している ITreview によれば、2022年のCRMカテゴリに76製品[10]ITreview. 2022. CRMカテゴリ. https://www.itreview.jp/categories/crm (2022-06-14 accessed). 、SFAカテゴリの商品に(CRMとの重複コミで)42製品[11]ITreview. 2022. SFAカテゴリ. https://www.itreview.jp/categories/sfa (2022-06-14 accessed). があります。この中からどれが自社の業務に適した商品がどれかを調査するだけでも、たいへん骨が折れる作業となるでしょう。

また、クラウドCRMは確かにとても便利なものですが、SaaS 時代ならではの悩みどころとして、カスタマイズ性に若干の制限がある点がよく指摘されます。特に、顧客管理の機能以外の自社基幹業務の情報、たとえば製造工場の工程管理や在庫管理に関する情報などを CRM のシステム内で賄おうとすると、結局第三者の開発会社に改修工事を依頼しなければ連携が取れないという事態に陥ってしまいます。[12]たとえばクラウドCRM最大手のSalesforce Sales Cloud … Continue reading
もしもそうなれば、せっかく顧客情報を一元化したのに、ほかの追加システムとの混合状態を引き寄せてしまい、CRM に期待していたはずの「社内システムの統一」がむしろ遠のいてしまうことになりかねません。

6. 柔軟なカスタマイズをCRMに求めるなら FileMaker によるCRM

当社のクラウドCRM

 

前節では現行のCRMはカスタマイズに若干の難点があることに触れました。しかし、企業の活動は一社ごとに千差万別です。契約してみたCRMサービスが自社の業務に完璧に沿わせられないのであれば、いかに便利なCRMと言えども社内に定着させることは難しくなってしまいます。

そこで当社より自信をもっておすすめするのが、当社が提供するCRMである【行動管理】です。

 

【行動管理】(Claris FileMaker® ベースの CRM / SFA )

kawaicrm_top
(クリックするとWebページに移動します)

このシステムは、Claris FileMaker® プラットフォーム で設計した CRM / SFA です。FileMaker はCRMサービスそのものではありませんが、規模の大小に関わらず、企業の業務に沿ったさまざまな業務アプリケーション(カスタムApps)を開発できます。[13]Claris FileMaker® それ自体の特長については、当社Webサイトの次の記事もご覧ください。▶ファイルメーカーでのシステム開発 そしてこのFileMakerでつくられたCRMには、他のクラウドCRMでは対応しきれない課題を克服するような強みがあります。

(1) リレーショナル・データベース(RDB)機能を活かした柔軟な業務処理。
 FileMakerは汎用的かつパワフルなリレーショナル・データベース機能を持っており、業務に関して想定しうるあらゆる処理をデータベースとして表現することが可能です。既存のクラウドCRMではうまくいかないか、かなり特殊な改造を強いられるような状況も、FileMakerでならきわめて柔軟に対応できます。

(2) 直感的で馴染みやすいレイアウト設計ができるため、旧システムからの移行がスムーズ。
 
既存のCRMは、大なり小なりそのCRMの風土に即した定番のテンプレートがあります。そのため、CRMを導入する企業は、多かれ少なかれその新しい様式に馴染む期間を設けなければなりません。一方 FileMaker であれば、どんなレイアウトでも自由に設計できます。以前から使っていた社内システムそっくりにデザインすることも、或いはスタッフがかねてからシステムに望んでいたレイアウトに刷新することも、自由自在です。自社の社風に即したレイアウト設計で、顧客管理を実践していただくことができます。

(3) Clarisパートナーである当社が関わり、基本仕様からの更なる最適化をお手伝いします。
 FileMakerプラットフォームで設計されたカスタムAppsは、ライセンスを購入した当事者が内製で設計してゆくこともあれば、当社のようなClaris社とパートナー契約を結んだ開発企業へ受託する形で入手することもできます。そして当社の【行動管理】は、使用環境の導入を含めた受託開発を前提としてご提供させて頂いております。基本パッケージの時点ですでに顧客管理・営業支援・タスク管理・問い合わせ情報管理など実装を備えていますが、お客様とのお打ち合わせをさせていただいた上で、更に踏み込んだ業務支援の仕組みをシステム内に組み込ませていただきます(詳細はお問い合わせください)。

もし既存のクラウドCRMでは要望にぴったり合うものがないとお感じの場合は、ぜひ当社までご相談ください。お客様の業務環境にとって最適な顧客管理システムをご提案いたします。

行動管理バナー
(※上記バナーをクリックすると【行動管理】紹介記事へ移動します)

脚注

脚注
1 表計算アプリで特定のシステムを維持することが難しい理由は、ほかにも次のような点が挙げられます:

(1) 作業者の誰か1人が少しフォーマットを変えただけで、計算式やテンプレートが破損する。
(2) 業務が複雑になるほどファイルが分散し、データの整合性を担保しきれなくなる。
(3) ファイル上で編集合戦が起きたり、それにより一部の作業者の作業時間が無駄になったりする問題を解決しがたい。
(4) 入力の抜け漏れをサジェストする機能が標準では実装されておらず、またそれらを実装する手間が膨大である。
(5) データ紛失やデータ漏洩などセキュリティのリスクを防ぐことが難しい。
(6) 複雑なマクロや関数で業務システムを組み立てていた場合、ちょっとしたバグの発生で業務が立ち行かなくなるなど、依存すればするほどシステムが破綻したときのリスクが高くなる。
(7) 関数やマクロが複雑であるほど、それに詳しいメンバーの人事異動や退職に対する組織的影響が大きく、引き継ぎが行われない場合もある。
(8) スマホやタブレット等で編集するのに適したレイアウトになっていない。
(9) 高度な関連データの参照を可能にする「リレーショナル・データベース」の機能が表計算アプリには備わっていないため、データの参照の柔軟性に限界がある。

……などです。とはいえ、これらの難点は、表計算アプリがツールとして“劣っている”ということではありません。あくまで顧客管理など、企業の業務システムとして応用するという用途を考慮した時に、さまざまな予算的・人材的・時間的制約が立ちはだかり続ける、という事実を示しています。

2 Customer Relationship Management の直訳は「顧客関係管理」となりますが、実際には「そのために造られたITツール/システム」を指すことが多いため、「顧客関係システム」と訳す傾向があります。
3 本文中ではそこまで詳しく触れませんが、CRMツールは1990年代初頭までのITツールとしての体裁を整えるまでに、概ね以下のような経緯をたどったと言われています:
 (1) 1950年代後半から1960年代にかけてコンピューティング技術が発達する。
 (2) 政府・銀行などの会計部門がコンピュータ技術を会計管理に利用する。その際に顧客のデータベースの管理が進む。
 (3) 同時並行でアナログな手法による回転カード式顧客管理(Rolodex ▶Google画像検索 )もある程度普及していた。
 (4) 1970年代には政府・銀行以外の企業でもコンピュータによる企業業務の管理が試みられ始める。
 (5) 1986年にデータベース問い合わせ言語であるSQLの規約がANSI(米国規格協会)によって初めて批准され、その規格が1987年にISO(国際標準化機構)に採用され、データベース言語としてのSQLの国際的な仕様が整う。
 (6) 1980年代に「データベース・マーケティング」という新しい経営分析の手法が提唱され、その後のIT技術を利用した営業・経営戦略の支柱となってゆく。
 (7) 米国テキサス州で Pat Sullivan と Mike Muhney が1986年に設立したコンダクター・ソフトウェア社が、1987年、ACT! という名称の顧客管理ソフトウェアを発売。(事実上のCRM系サービスの元祖と言われます。ただし1980年代にはまだCRMという用語は本格的には普及しておらず、ACT! もCRMとは呼ばれずに販売されました。ACT! は経営&開発母体を変えながら、現在も最新のバージョンがリリースされています。)
【参考】Salesforce. n.d. The Complete History of CRM. https://www.salesforce.com/ap/hub/crm/the-complete-crm-history/ (2022-06-10 accessed).
4 ただし Tom Siebel らの商品が CRM という呼称それ自体の初出というわけではなく、CRMの呼称の起源には1980年代のどこかの時点ですでにあったなど、諸説あるようです。なお Siebel Systems は2005年にオラクル社に買収され、現在はオラクル社が Siebel CRM シリーズを販売しています。
5 海外製品では、Goldmine 社や Maximizer 社などによって、スモールビジネス向けに特化したCRMパッケージも販売されていたため、完全に中小企業が無視されていたわけではありませんでした。ただし、そうした製品であっても、オンプレミス型の設置が、CRM の性能を発揮するにあたっての障害になっていたという点は変わりません。
6 2022年現在から見るとやや古い記事となりますが、クラウドCRMが普及し始めた2014年ごろにはすでに、ROI(投資収益率)が8.71倍になったとの報告があります。
Nucleus Research. 2014(2014-06-21). CRM pays back $8.71 for every dollar spent. https://nucleusresearch.com/research/single/crm-pays-back-8-71-for-every-dollar-spent/ (2022-06-13 accessed).
その一方で、Nucleus が報じるようには投資は必ずしもうまくいかない場合もあるというダイナミクス・コンサルタンツ社の指摘もありますので、そちらもあわせて紹介しておきます。
Dynamic Consultants Group. n.d. ROI of CRM in 2021. https://dynamicconsultantsgroup.com/resources/crm/roi-of-crm-2021/ (2022-06-14 accessed).
7 CRMとSFAの区別に関しては、下記も参考になります:
安齋慎平 / データのじかん. 2021(2021-04-07).《図解》SFAとCRMの違いとは?あなたに必要なのは「営業支援」それとも「顧客管理」? https://data.wingarc.com/sfa-and-crm-11111 (2022-06-10 accessed).
8 見込み顧客を継続的な顧客として“育てる”ことを、「リード・ナーチャリング」とも言います。その他のリードの概念については下記を参照してください。日経BPコンサルティング. 2018(2018-09-18). 「顧客」「リード」の定義を明確にしよう(BtoBの「顧客」を理解しよう(第1回)). https://consult.nikkeibp.co.jp/cclab/atcl/20180918/ (2022-06-13 accessed).
9 Software as a Service の略。ソフトウェアを記録媒体などパッケージ商品として頒布するのではなく、インターネット経由でアクセスしてもらうことでユーザに利用してもらうビジネスモデルを前提としたソフトウェアのこと。
10 ITreview. 2022. CRMカテゴリ. https://www.itreview.jp/categories/crm (2022-06-14 accessed).
11 ITreview. 2022. SFAカテゴリ. https://www.itreview.jp/categories/sfa (2022-06-14 accessed).
12 たとえばクラウドCRM最大手のSalesforce Sales Cloud は、ノーコードでも十分多機能と言えますが、基本サービスに含まれない高度なカスタマイズを行うためには「カスタム Lightning コンポーネント」と同サービス用の専用プログラミング言語「Apex」の知識が必要となります。これらを内製で行えない場合は、Salesforceのカスタマイズを受託開発してくれる企業を探す必要があります。
13 Claris FileMaker® それ自体の特長については、当社Webサイトの次の記事もご覧ください。▶ファイルメーカーでのシステム開発

Claris Partner
カワイ事務機はClaris社(旧FileMaker社)と正式にビジネスパートナー契約を結んでおり、認可を受けている企業です。

Claris、FileMaker、およびファイルメーカーは、Claris International Inc. の米国および/またはその他の国における登録商標です。
Claris FileMaker WebDirect は、Claris International Inc. の商標です。

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